高専生のためのオンライン数学塾「さかのうえの塾」塾長の坂上です。
よくネット上では「高専生に塾は必要ない」「高専生にも塾は必要」など、色々な意見が見られます。これまで高校生も高専生も数多く指導してきた私からの「ニュートラルな本当の答え」を記事にしてみました。
また、高専生が塾を選ぶ際のポイントを、あまり知られていない「塾のいろいろな事情」も踏まえて解説します。
「高専生に塾は必要?」のニュートラルな答え
高専生に塾は必要か?このような質問にネット等では
友達や先輩が教えてくれるから高専生に塾は絶対必要ない!
教授の部屋に行けば教えてもらえるから塾に行くのはもったいない!
など、主に現役高専生・高専卒業生・その保護者視点の回答を見ることがあります。
また逆に
高専生にも塾は必要!
という、高専生を教える塾関係者のコメントを見ることもあります。
高専卒として前者の気持ちもよく分かりますし、塾を経営している身としては後者の気持ちも分からなくはないのですが⋯これまで沢山のプロ講師として沢山の高校生とも高専生とも接してきた私のニュートラルな答えは、
本当の答え:高専生は塾に行かなくて良いケースが多いが、塾が必要なケースもある
だと思います。そう言える納得の理由を3つ挙げたいと思います。
理由①勉強環境自体は「高専が高校より全て優れている」とまでは言い切れない
確かに「寮生なら寮の友達に聞ける」「教授の部屋で教えてもらえる」この2つは高校にはない高専ならではの良い環境です。私もそれはつくづく感じていました!
ただ、「高校生」にも「高専生」にはない良い勉強環境があります。

もちろん私も、卒業生として高専の勉強環境はとても好きなのですが、一旦それは置いておいて…ニュートラルな視点での観察です
例えば、高校生の場合、通学地域がある程度狭い範囲ですので、学校帰りに友達が集まる勉強スポットで友達と一緒に勉強する習慣がよくあります。これは学生の大半が遠方から集まっている高専ではあまりない高校ならではの良い環境です。特に偏差値60付近の高校では、それがより顕著になる印象です。
また、高専の教授は「研究のプロ」ではあるものの、教員免許を持っていない場合がほとんどです。それに対し、高校の先生は教員免許を持つ「教えるプロ」です。それで、高専の授業は当たり外れの振れ幅が大きいのに対して、高校の場合は高専と比較するとある水準以上のクオリティが保証されている傾向があります。それで、高校でも先生を上手に使えば疑問があっさり解決することもしばしば。
では、そんな勉強環境の「高校生」に塾は絶対必要ないかと断言出来るかと言うと…高校生向けの塾や予備校の需要を考えると「必要な子もいればそうでない子もいる」が答えではないでしょうか?高専でも同じことが言えるのではないでしょうか?
ただ一方、高専のほうが入学から目標が明確な学生が多いため「学生の意識が普段からより勉強に向いている」という傾向があります。一言でいうと、高専はオタクが高校よりも多く集まっています。それで、高校生よりも「友達同士の日常会話で勉強の話題が出やすい」という大きなメリットがあると思います。この勉強環境のメリットが、理解不足を十分に補う事ができるのであれば、その学生さんにとっては「塾は必要ない」という結論は十分に納得できるものです。
理由②「高専は〇〇だ」の言い切りは全国の高専を踏まえての客観?なのかが不明瞭
既に触れましたが、ネット上では「高専は〇〇だ」を断言している書き込みが多くあります。私自身も貴重な意見として参考にさせて頂いています。
ただ、58高専中の1高専の1人の学生(または保護者)のコメントとしては参考にしていますが…自分プラス周りの少人数のローカルな経験の情報が、全高専の約5万人全員に当てはまるかというと…。高専ごとの違いを実感している私としては、根拠が不十分に思えます。(私も高専生時代は「自分の高専」=「高専のすべて」と思っていたので、気持ちよく分かるのですが…。)
単純計算にはなりますが、ある高専生が自分の学年全員の成績状況を熟知していたとします(絶対ないことですが…)。この時点で自分の高専の約5分の1のデータがあります。では、全国に58高専あることを考慮した時、それは全高専の何%のデータになるでしょうか?こちらも単純計算ですが、1÷5÷58×100≒0.3%です。
つまり、ネット上の「自分の高専は〇〇だから、高専は〇〇だ」情報は1,000人のうち3人分の情報で残り997人について断言しているようなものです。
確かに、ネット上の「高専生に塾は必要ない」情報は、高専によって次のような違いがあることが見過ごされているように思えます。
・留年しないよう教授が追試を何度もしてくれる高専もあれば、追試が一度もないまま一発勝負で留年が決まってしまう高専もある。
・仮進級という制度があったりなかったり、進級後の過去の追認試験という制度があったりなかったり…と単位取得の制度も高専によってバラバラ。
・学年ごとの履修内容も高専によってかなり幅がある。数学で言うと…線形代数の教科書を1年生でガッツリ習う岐阜高専のようなところもあれば、逆に基礎数学を2年生までじっくり習う神山まるごと高専のようなところもある。
・定期テストが成績に与えるパーセンテージも高専によってかなり違う。例:1年生基礎数学の定期試験のウエイトは一関高専は100%、小山高専は95%、東京高専80%、明石高専は30%など、高専ごとに全然違う。
・寮がない高専もある。例:神戸高専、大阪公立大高専。
・赤点が60点固定ではなく、学年で変わる高専もある。例:富山高専や松江高専は学年によって赤点が変わる。
このように、高専によって単位取得のハードルや環境はまちまちです。
ネット上の情報を鵜呑みにしてしまった結果「うちの高専は全く違っていた」…という事も起こりうる訳です。
理由③実際に毎年全国の高専で大勢の高専生が留年している
現実に目を向けてみると…毎年全国の高専で1,000人単位の高専生が留年しています(過去に文科省が1年分調査し公表した年は2,000人越)
その全員が授業をサボったためではなく「どうしてもついていけなくて…」という例も少なからずあることは容易に推測できますね。
当塾も、毎年100人以上の高専生やその保護者様からお問い合わせを頂きますが、「勉強時間を頑張って確保してきたのに赤点を取ってしまった」という学生さんが多くを占めています。
実際にネット上の「高専生に塾は必要ない」のコメントの多くを見ると、成績上位層の学生・保護者さんからのものが多い傾向にもあるように見受けられます。それで、ネットのコメントはあくまで参考にしつつ、まずは今の自分の成績の立ち位置をしっかり押さえておくことが重要だと思います。
高専生が今の成績で塾が「必要?」「必要ない?」はどこで判断すればいい?
高専生も「塾が必要でないケースが多いが、必要なケースもあるかもしれない」と言える3つの理由、ご納得頂けたでしょうか?
では、どんな場合なら高専生でも塾を選択肢として考慮できそうでしょうか?
こちらは当塾の受講生さんのお話しに基づく感覚的な話にはなりますが、「7割以上は授業が分かる」レベルであれば、友達や教授の助けで十分赤点回避できる可能性があると思います。
逆に、授業が「何をしているのかほとんど分からない」〜「6割程度しか分からない」の間にいるのであれば、塾を選択肢の一つに入れても良いかもしれません。その理解度ですと、友達や教授の助けだけでは赤点回避は厳しい可能性もあるからです。また、「勉強をしたはずなのに赤点が続いている」も、学年末に手遅れになる前に塾を検討してみるのも良いと思います。
それで、進級が危ない時には
進級やばいかも…でも高専生なのに塾行くって…高専入った意味なくない?
という考えは一旦保留にして、
「同じ学年を2回過ごすリスク」と「塾にかけるコストの必要性の有無」
を天秤にかけて、自己解決がベスト?それとも塾がベスト?かを、ネットの噂ではなく「自分としっかり向き合って」冷静に比較してみることも必要かと思われます。
高専生が塾やオンライン塾を選ぶ時のポイント
では、高専生が「自分には塾が必要かも…」となった場合の塾の選び方のポイントを解説していきます。まずは塾そのものの選び方のポイントです
塾選びポイント①:高専生「も」指導する塾より、「高専生のための塾」のほうが良い
「小学生・中学生・高校生・高専生も対応」という塾を見かけることがあります。
決してそのような塾が悪いわけではなく、高専生を丁寧に指導してくれる塾も多いと思います。ですが、安心なのは高専生に特化した塾です。高専は、カリキュラムがとにかく特殊だからです。
もし「高専生に特化した塾」ではない塾を検討している場合は、塾長にお問い合わせする際に「高専のカリキュラム」についてしっかりとした理解があるかを、それとなく確認してみると良いと思います。
塾選びポイント②:サポートの多さを選ぶなら大手塾、コスパをとるなら個人
次に、個人講師一人で経営している塾か、講師がたくさん在籍している大手塾かの選択肢です。
大手塾はサポートが充実しているが、費用がかかる
大手塾のメリットはサポートが豊富なことです。講師の交代も出来ますし、自習室や映像授業などのサービスもあるかもしれません。また講師以外のスタッフもいますので、クレーム対応や教育相談なども充実している場合が多いです。
その分コストはかかります。働いている全員の報酬と必要経費のすべてを、親御さんからの月謝で賄う必要があります。
- アルバイト学生講師への報酬
- 塾長や事務員などスタッフの給与
- システム維持などにかかる費用
- 宣伝広告費(例えば、Google検索で「スポンサー」と表示される費用)
を、月謝で賄う必要があるため、
料金の相場は、
入塾料:¥20,000程度
1時間あたりの授業料:¥6,500〜¥8,000程度
のようです。
コストは多少かかっても、上に挙げたようないろいろなサポートがあったほうが良いという方は、大手を選ぶのが良いかもしれません。
コスパを選ぶなら個人、ただ融通は利きづらい
コスパを重視する場合は個人で塾や家庭教師をしている講師を探す、というのも選択肢の一つです。
個人講師のメリットは、コストが最小限で済むことです。
一例として当塾「さかのうえの塾」を例に挙げると、かかる費用は
入塾料:¥0
1時間あたりの授業料:¥4,800
です。プロ講師の授業料のみかかるため、コストは最小限ですみます。詳しくはこちらから↓
一方、個人講師のデメリットは、「講師の交代ができない」ことと「好きな曜日時間をピンポイントで選べない」ことです。そのデメリットがそれほど気にならない、コスパを重視したいという方は個人塾の選択が良いかもしれません。
塾講師選びのポイント①:特に数学は講師も「高専卒」のほうが良い
次に、講師選びのポイントをお伝えします!
余談ですが…
私の塾講師の経験上ですが、大手塾では講師は塾に勧められるがままで「講師をこちらからは選べない」と思っている保護者さんが意外に多いようです。「〇〇さんにぴったりな講師を担当させました〜」というのを鵜呑みにしまう訳です。もちろん、相性がしっかり考慮される事もなくはありませんが…多く場合、主に塾側の都合か講師側のスケジュールの都合で講師が割り振られていきます。
「積極的に要望を伝えると嫌がられるかな〜」感じられるかもしれませんが、大手塾の場合は「塾生の人数が多ければ多いほど利益につながる」ため、そこまで嫌がられることはなく「熱心な保護者様だな〜」ぐらいな印象しか受けません。
積極的に要望を伝えいくほうが、最終的に納得のいく入塾になると思います。
では本題に戻って、まず最初のポイントです。数学が受講科目に入っているのであれば、講師は「高専卒」が良いです!
高専卒が良い理由:高専数学は高校数学と比較して範囲のボリュームがすごい
高専の数学は高校数学とは学習範囲のボリュームが全く違います。
専門科目でも必要な数学を「専門科目を習う前に」習得する必要があるため、数学が怒涛のスピードで進み、3年生が終わる時点では大学数学もかなり学習している状態です。
ですから、高校卒の大学生アルバイト講師が高専3年生に数学を教えるということは、同級生に数学を教えている状態と大差はありません。指導経験豊富なプロ講師だったとしても、高校生までしか教えたことがないのであれば指導が難しいという場合も多いようです。
塾講師選びポイント②:講師の「指導経験」はかなり重要!
講師を判断する時には学歴もさることながら、実は指導経験のほうがずっと重要です!
指導経験が重要な理由:「学力」と「指導力」は別のスキルだから
「自分(講師自身)が解ける」から「分かりやすく教えられる」ようになるまでには、指導経験が不可欠です!
良い授業、とはどんな授業でしょうか?説明が論理的で分かりやすい、これは大前提です。私がこれまで何百人もの生徒や学生をマンツーマンで教えてきた結論は、「教える相手の今の立ち位置を正確に把握して、その位置に講師が合わせていける授業」これが良い授業だと思っています。そのためには、「色々なタイプの学生と沢山接して、その立ち位置に合わせた教え方を試行錯誤していく経験」がどうしても必要です。
もちろん、大学生の講師だけで成立している塾にも良い講師はいらっしゃると思います。ただその場合「学力」は保証されていても「授業力」は講師によってある程度の当たり外れは想定しておいたほうが現実的でしょう。
さらに、オンライン塾講師・家庭教師の場合、ネット上の登録のみで採用試験もなく講師を採用する塾や、初回の講師への数十分程度の面談を「研修」としている塾がほとんどを占めています。
それで、「〇〇さんにぴったりの講師」を鵜呑みにせず、担当講師の「指導スキル」をしっかり見極めることが重要です。大手塾では講師交代も可能ですが、慣れてからの交代は学生さんにとってストレスになるため、可能なら早い段階で「この講師なら長く続けられそう」と思える講師を選べるようにしましょう。
私が色々な学生講師・プロ講師と接してきた経験上、講師の質は「講師の学力(学歴)とセンス」が3割、「指導経験と講師自身の向上心」が7割だと思っています
まとめ
塾の高専対応度は重要!大手塾か個人塾かは何を重視するかで決めると良い!
講師の「学力」は大前提で「教える力」を見定めることが重要!
以上、高専生に塾は必要か?と、高専生が塾を選択したときの選び方のポイントでした。「塾が必要かも?」と思った時の参考にされてください。



留年しそうな高専生が一人でも助かって、高専ライフをできればストレートで完走できることを願っています!
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