「高専生の単位の壁は数学と物理!」よく聞く高専あるあるの一つです。間違いなく数学と物理は単位を落としがちな候補トップ2でしょう。
ただそれは高専の数学と物理がハイレベルだからなのでしょうか?
さかのうえの塾のホームページでも解説しているように「高専数学」は「高校数学」と比較すると範囲を網羅するスピードも順番も全く違うのでカリキュラム自体が高校生から見ると異次元です。
では「高専物理はハイレベル?」という通説はどうでしょうか?「高校生」と「高専生」のどちらも数多く指導してきたプロ講師の視点で解説したいと思います。
2年生までの「高専物理」と「高校物理」にさほど差はない
まず、前提この記事での「高校物理」と「高専物理」という用語ですが、
「高校物理」→進学校の理系の高校生が2年までに習う「物理基礎」と「物理」
「高専物理」→高専2年生までの物理(高専ごとにカリキュラムが異なるためあくまで平均)
としてお話ししたいと思います。
実は「高専物理」と「高校物理」、教科書や問題集を見比べるとすぐに分かりますが、高専物理のほうに若干のクセはありますが、内容の難易度でいうと差はほとんどありません。
・早い段階で三角比を使う→数学で早く習うから仕方ない。でも、高校でも学校によっては1年から使う
・早い段階で文字のみで解く問題が多く出てくる→慣れが必要だが、最終的には文字のほうが扱いやすいので、むしろメリットでもある。
逆に、「高専物理」は全ての範囲を丁寧にというより、教授の判断で飛ばして授業をすることも多いため、高専生よりも高校生のほうが知識がありそうな分野もあるほどです。
講師初心者だった頃、高校生に物理を尋ねられた時に「え、こんなの高専で習ったっけ?」と焦り、確認すると私の高専では習っていない範囲でした…
差がない証拠に…多くの高専で、物理では高校と同じ問題集が採用されています!(「セミナー物理」や「リードα物理」などは全国の高校生の物理でも超がつくド定番の問題集。)
ではなぜ「高専物理は1年生からレベルが高い」という通説が生まれたのでしょうか?
高専物理はハイレベルと思われている理由1:必修科目だから
高校では「物理」は普通高校では基本選択科目です。「基礎」がつく理科系科目は必須でも、「基礎」がつかない「化学」「物理」「生物」の中から理系選択でも最大2科目を選ぶのが通常です。大抵「化学・生物」か「化学・物理」の2択になります。それで、物理に苦手意識がある高校生は「化学・生物」を選びます。「物理」を選んだ時点で「生物と物理だったら物理がいい!」と選択した生徒なわけです。(※理系志望学科の受験のために物理をどうしても選択しなければならない場合もあります)
高専では物理は必修科目です。苦手意識があっても高校生のように選択の自由がないので、「物理は履修しない」という選択肢はありません。「逃げられない、落とせない」という時点で赤点へのプレッシャーも変わってきます。
この違いが特に暗記系科目が得意な学生にとって「高専物理は1年生からレベルが高い」という通説を生んできたひとつの要因と思われます。
高専物理はハイレベルと思われている理由2:教えるのが「研究のプロ」の教授だから
高校物理を教えるのは教員免許を取得した「教えるプロ」の教員です。
高専物理を教えるのは「教授」です。「研究のプロ」ではありますが、「教えるプロ」ではありません。
決してひとくくりにする意味ではありませんが、いろんな高専の学生さんの感想を総合すると、「物理の教授はマニアックな教授が圧倒的に多い」傾向があるようです(全ての教授がそうではないと思いますが…傾向としては高いと見受けられます。あくまで個人の感想です)。
「理系の教授のマニアックな授業」は大学ではよくある話です。が、中学教育を終えたばかりの15歳の学生には相当高いハードルになるでしょう。
教授が1人で熱く語るけど、学生は置いてきぼり…
私が受け持ってきた高専物理に悩む学生さんたちも、こんな授業風景にほぼ全員が同意しておられました。
それでもテストだけはしっかりとした問題が出されるため、「高専の物理はレベルが高い」という認識を生んでいるのではないかと推測されます。
多くの高専生が3年生以降に習う「応用物理」は確かにレベルが違うことが多い
ここまでは、2年生までの物理についての話でしたが、多くの高専生が3年生以降で履修する「応用物理」についてはどうでしょうか?(※注:高専や学科によって差があり、3年生でも「高専物理」の内容を学ぶところもあります)
結論から言うと、
2年生と比べてレベルの上がり方がえぐい!
傾向にあります。
物理を選択した高校生は3年生の時に「共テや国公立2次対策」として、2年生までの物理を「応用」していきます。
高専生も3年生で物理を「応用」していく訳ですが…
応用の度合いが全然違う!
具体的には、
2年までの物理ではほとんど使わなかった高専ハイレベル数学を、応用物理で突然炸裂させる
イメージです。(微分積分はもちろん、高専によっては行列や微分方程式をバンバン使う場合もある)
この応用物理が、3年生から4年生に進級するのが難しい要因の一つになっているというケースは非常に多いです。
高専物理は教科書を自分で読んで理解する力が求められる
高専で履修する「物理」や「応用物理」について取り上げました。
2年生までは決してハイレベルではないが、高専独特の環境ゆえに点数を取るのが難しい
3年生以降の物理は2年までの物理との難易度の差がえぐい
というのが正しい言い方かもしれません。
特に授業がマニアックな場合は、「自分で教科書をいかに理解できるか」が物理で得点するポイントになると思います。
授業にみんなが飽きていたり内職したりしている間に、頑張って教科書を読み込みましょう!
とはいっても、それが出来ないから苦労しているんだよな…
という方は、全国の高専生専門の塾「さかのうえの塾」まで遠慮なくご相談ください。数学と物理、数学と専門教科を併用している学生さんも多くおられます。